結論:コンベックス(ハマグリ刃)は、日常維持なら「革砥(ストロップ)+研磨剤」、鈍ったら「サンドペーパー+マウスパッド法」で研ぎます。固定角度の砥石は刃の丸みを平らに削ってしまうため不向きです。コンベックスを多く採用するBark Riverのナイフ(A2鋼・CPM-3V)を例に、革砥の使い方から番手選びまで、初めての方向けに手順で解説します。
コンベックスグラインドは刃の根元から刃先まで丸く膨らんだ断面を持ち、切れ味の鋭さと刃先の強さを両立します。一方で平らな砥石にそのまま当てると丸みが消えるため、専用の研ぎ方が必要です。革砥とサンドペーパーの2手法を、自宅での研ぎ・メンテ検証をもとに番号手順でまとめました。研ぎ・防錆・保管を通しで知りたい方はアウトドアナイフのメンテナンス完全ガイド|研ぎ・防錆・保管もあわせてご覧ください。
コンベックス(ハマグリ刃)とは?
コンベックスは、刃の側面が外側へ丸く膨らんだグラインド形状です。断面がハマグリの貝殻のように見えることから日本では「ハマグリ刃」と呼ばれ、平面で構成されるフラットグラインドやV字のスカンジグラインドと区別されます。
丸みのおかげで刃先の角度に厚みが残り、薪割りやバトニングといった衝撃のかかる作業でも刃こぼれしにくいのが特長です。Bark Riverはこのコンベックスを主力グラインドとして採用しており、A2鋼の定番Auroraや、多鋼材展開のBravo 1など、多くのモデルが工場出荷時からハマグリ刃に仕上げられています。鋼材ごとの硬さや粘りの違いはアウトドアナイフ鋼材ガイド|CPM-3V/MagnaCut/A2/CPM-154比較で詳しく扱っています。
問題は研ぎ直しです。コンベックスは「明確な刃付け角度」を持たないため、固定角度ガイドや平らな砥石を当てると、膨らんだ部分が削られて二段刃(マイクロベベル)になります。これを避けるのが革砥とサンドペーパー法の役割です。
コンベックスは何で研ぐ?
日常の切れ味維持は「革砥(ストロップ)+研磨剤」、刃が本格的に鈍ったら「サンドペーパー+やわらかい下敷き(マウスパッド)」で研ぎます。この2つで、固定角度の砥石を使わずに丸みを保てます。
革砥は牛革やバルサ材の上で刃を引いて、ミクロン単位のバリ取りと鏡面仕上げを行う道具です。研磨剤には酸化クロム(グリーンコンパウンド、約0.5ミクロン相当)が広く使われ、コンベックスの最終仕上げに向きます。これだけで、軽く切れ味が落ちた段階なら数分で復活します。
刃が紙をスパッと切れないほど鈍った場合は、サンドペーパーを使います。マウスパッドやゴムシートなど弾力のある下敷きの上に耐水ペーパーを置き、刃を押し当てると、ペーパーが刃の丸みに沿って沈み込み、コンベックス形状を保ったまま研げます。これがコンベックス研ぎの核心です。固定角度の砥石やシャープナーは、丸みを平らに削るため使いません。
革砥(ストロップ)での日常維持手順は?
手順は「①研磨剤を革に塗る→②刃を寝かせて当てる→③刃を引く(押さない)→④裏返して反対面→⑤左右各15〜20回」の5ステップです。1回の作業は約5分、切れ味が少し落ちたと感じたタイミングで行います。
自宅でのメンテ検証では、Bark River Auroraに対して以下の番号手順で行い、酸化クロムのグリーンコンパウンドを使うと、コピー用紙を縦にスッと切れる状態まで5分で回復することを確認しました。
- 研磨剤を塗る:革砥の表面にグリーンコンパウンド(酸化クロム約0.5ミクロン)を擦りつけ、薄くムラなく行き渡らせる。
- 刃を当てる:刃を寝かせ、コンベックスの丸みが革に面で触れる角度に置く。鋭角に立てすぎない。
- 引く:刃の背の方向(刃先と逆)へ革をなでるように引く。絶対に刃先方向へ押さない(革を削り危険)。
- 裏返す:刃を反対面にして同じ角度・同じ方向で引く。左右の回数を均等にする。
- 反復:左右各15〜20回を目安に。爪に軽く当てて滑らず食いつけば仕上がり。
ポイントは「角度を立てすぎないこと」です。立てるとコンベックスの先端だけが当たり、徐々に二段刃化します。革の弾力で丸み全体をなでる意識が、ハマグリ刃を保つコツです。日常の防錆と合わせた手入れはナイフのサビ防止と日常の手入れ|炭素鋼・ステンレス別が参考になります。
サンドペーパー+マウスパッド法のやり方は?
弾力のある下敷きの上に耐水ペーパーを置き、番手を粗→細へ上げながら刃を引いて研ぎます。下敷きがペーパーを刃の丸みに沿って沈ませるため、平らな砥石では崩れるコンベックスを保ったまま研ぎ直せます。
用意するのは耐水サンドペーパー(#400/#800/#1500/#2000程度)と、マウスパッドまたは厚さ5mm前後のゴムシート、水または石鹸水です。粗い番手で形を整え、細かい番手で仕上げる流れは、番手の番号順に進めます。
- 下敷きを置く:平らな台にマウスパッド、その上に耐水ペーパー#400を置き、水を少量たらす。
- 粗研ぎ:刃を寝かせて当て、革砥と同じく刃の背方向へ引く。左右各10〜15回で刃先のダレを取る。
- 番手を上げる:#800→#1500→#2000の順に交換し、各番手で左右均等に引く。傷が細かくなり光沢が出る。
- バリを確認:刃先を指の腹で軽くなでて、めくれ(バリ)が出たら反対面で取る。
- 革砥で仕上げ:最後にグリーンコンパウンドを塗った革砥で左右各20回。鏡面に近い切れ味に整う。
A2鋼やCPM-3Vのような硬めの鋼材は、#400から始めると効率的です。深い刃こぼれがある場合のみ#240など粗い番手を足します。コンベックス用のナイフ本体を探すならBark Riverナイフ一覧から選べます。
革砥とサンドペーパーの使い分けは?
軽い切れ味落ちは革砥のみ、紙が切れないほどの鈍りや刃こぼれはサンドペーパー法、という基準で使い分けます。革砥は「維持」、サンドペーパーは「研ぎ直し」と役割が分かれます。
判断に迷わないよう、状態別の対処を表にまとめます。鋼材は正式名称で統一し、Bark Riverの代表モデルを併記しました。
| 刃の状態 | 推奨手法 | 使う道具 | 目安時間 |
| 少し引っかかる程度 | 革砥のみ | グリーンコンパウンド+革砥 | 約5分 |
| コピー用紙が切れにくい | サンドペーパー(#800〜) | 耐水ペーパー+マウスパッド | 約15分 |
| 刃こぼれ・先端のダレ | サンドペーパー(#400〜) | 耐水ペーパー+マウスパッド+革砥仕上げ | 約25分 |
| 形状が二段刃化 | サンドペーパーで丸み再生 | #400→#2000+革砥 | 約30分 |
頻度の目安は、フィールド使用が多いなら帰宅後に革砥で数回、バトニングや解体で酷使したらサンドペーパーで本格研ぎ、です。Bark RiverのA2鋼Auroraや多鋼材展開のBravo 1でも、この基準で切れ味を保てます。なお記事内では鋼材を「A2鋼」「CPM-3V」の表記で統一しています。
コンベックスを研ぐときの注意点は?
最大の注意は「固定角度の砥石やシャープナーを使わないこと」です。平らな研磨面に押し当てると、ハマグリ刃の丸みが削られて切れ味と耐久性のバランスが崩れます。
刃先方向へ革やペーパーを押すのも厳禁です。研磨面を削るうえ、刃が食い込んで手を切る危険があります。必ず刃の背方向へ「引く」動作で行ってください。また、研ぎ後は金属粉やコンパウンドが刃に残るため、乾いた布で拭き取り、防錆油を薄く塗ると点錆を防げます。
携行時の注意も補足します。研ぎ上げたナイフをフィールドへ持ち出す場合、刃体6cmを超えるナイフはキャンプ・釣行・狩猟・業務など正当な理由のない携帯が銃刀法で禁止されています。AuroraやBravo 1は刃長が10cm台あるため、用途を明確にして持ち運んでください。研ぎ・防錆・保管の全体像はアウトドアナイフのメンテナンス完全ガイド|研ぎ・防錆・保管に集約しています。
よくある質問
Q. コンベックスを普通の砥石で研いではいけませんか?
A. 固定角度では丸みが削れます。砥石を使うなら手で角度を微妙に変えながら全体をなでる必要があり、初心者には革砥かサンドペーパー法が安全です。
Q. 革砥の研磨剤は何を買えばいい?
A. まず酸化クロムのグリーンコンパウンド(約0.5ミクロン)1本で十分です。仕上げ用途に向き、コンベックスの日常維持に最適です。
Q. サンドペーパーの番手は何種類いりますか?
A. #400・#800・#1500・#2000の4種があれば大半に対応できます。深い刃こぼれの時だけ#240を足してください。
Q. マウスパッドがない場合の代用は?
A. 厚さ5mm前後のゴムシートやモバイルマウスパッド、雑誌を重ねた弾力面でも代用できます。硬い板の上では丸みが保てません。
Q. A2鋼とCPM-3Vで研ぎ方は変わりますか?
A. 手順は同じです。CPM-3Vは耐摩耗性が高く研ぎに時間がかかるため、#400から始めると効率的です。
Q. どのくらいの頻度で革砥を当てればいい?
A. フィールド使用が多いなら使うたびに左右10回ほど。引っかかりを感じたら早めに当てると、サンドペーパーでの本格研ぎを減らせます。
Q. 研いだ後にサビが出るのを防ぐには?
A. 研磨後は金属粉を拭き取り、防錆油を薄く塗ってください。A2鋼は炭素鋼系で錆びやすいため、保管前のひと拭きが有効です。
著者:店長 宇田川
Bark River専門店 eナイフ.jp(br-knives.com)店長。ナイフ専門店として10年以上、Bark Riverをはじめとするコンベックスグラインドのカスタムナイフの輸入・販売・メンテナンスに携わる。店舗での検品・撮影・社内テストと自宅での研ぎ・メンテ検証を通じて、革砥・サンドペーパーによるハマグリ刃の研ぎ直しを日常的に実践。